COBIT 2019
I&T(情報と技術)に関する事業体のガバナンスのフレームワーク
COBIT 2019登場の背景
COBIT 2019が登場した背景には4つの要因がある。
1. ITガバナンスからI&Tガバナンスへ(I&Tガバナンスの最適化)
2. 変化する環境に相応したプロダクトであること
3. これまでに構築されたCOBITの強み、特定されている機会の上に構築すること
4. 把握されているCOBIT 5の限界
これらについて、一つ一つ見ていくことにする。
1. ITガバナンスからI&Tガバナンスへ(I&Tガバナンスの最適化)
「IT」は技術的なものであるという認識から、特定の組織部門がその技術に関する主要な責任を担うものであるとされるのが通常であった。このため、本来、事業体全体に関わるはずのITガバナンスが偏ったものとなることが多かった。
ここで新たに「I&T: Information & Technology」(情報と技術)という表現を用いることで、事業体がゴールの達成のために生成し、処理し、そして利用される全ての情報は、それに関係する技術同様、事業体全体に関わるものであるとした。
ITガバナンスからI&Tガバナンスへと言葉を変えた背景がここにある。
2. 変化する環境に相応したプロダクトであること
以下のようなことが認識されていた。
・ COBIT 5は2012年に発行され、ほぼ7年が経過した。
・ ITの利用に関して、新たな技術の登場、ビジネス新たなトレンド(例えばデジタル化)はCOBITに取り入れられておらず、再度それらと整合性を取る必要があった。
・ 実務家、経営科学及びアカデミック領域からの、I&Tガバナンス創造のドメインにおける洞察を組み込む必要があった。
・ 他の基準は進化しており、この結果として基準やフレームワークの状況が以前とは異なったものとなっており、再度、整合性を取る必要があった。
・ より柔軟で頻繁なCOBITの更新が要求されていた。
COBIT 2019の開発チームは、以下の標準やフレームワークとCOBIT 2019の整合性を取る必要があると考えた。
3. COBITの強みと特定されている機会の上に構築
強み
・ COBITはITガバナンスのフレームワークとしてユニークな包括的なものである。
・ COBITのプロセスガイダンスは、成熟しており、依然として最高品質水準に達している。
・ COBITのITにおけるビジネスの視点は、その影響をさらに広げることについてユニークな機会を与えている。
機会
・ COBITの現在の(対象としている)利用者は、なお多くがIT及びアシュアランス指向である。
・ COBITに秘められている優れた点を再発見もしくは再登場させる機会がある。
・ 例えば特定の設計要因(デザインファクター)を結合させた、より規範的なガイダンスの提供。
4. 把握されているCOBIT 5の限界
・ COBITの利用者は自身のニーズに合った内容を探し出すことが困難であるとしている。
・ 実際に適用するには複雑であり、そして骨の折れるものであると認識されている。
・ イネーブラーモデルは展開及びガイダンスの観点から見て不完全であり、そのためしばしば無視された。
・ 骨の折れるプロセス能力モデル、及び他のイネーブラーに関するパフォーマンスマネジメントの支援の全般的な欠落。
・ ITガバナンス自身が変革を抑制するものであり、管理上のオーバヘッドであるという認識 - COBITそのものの弱点ではないが、一般のITガバナンスの問題。